最新の暗号資産の現状|コラム
コラム
2025.09.08
仮想通貨
最新の暗号資産の現状
最新の暗号資産の現状
暗号資産はこの数年で、一般投資家のみならず企業・公的機関にまで活用が広がりました。日本でも口座保有は大きく伸び、上場企業による保有公表も相次いでいます。価格の急変動、ステーブルコインの制度整備、寄付や国際送金での実装が進む一方で、税制は十分に追随しているとは言いがたく、相続・寄付・所得計算などで実務上の歪みが顕在化しています。
このコラムでは以下の4点を軸に現状と論点を整理します。
業界団体の税制改正要望の要点
相続で噴出するかもしれない「100億円問題」
暗号資産による寄付とポイント付与の課税
国内外動向(企業保有・ETF・DAO・ステーブルコイン)
1. 業界団体が求める税制改正 所得税・資産税・総論の要点
暗号資産の主要団体はJCBA(日本暗号資産ビジネス協会)とJVCEA(日本暗号資産取引業協会)。両者は概ね共通の要望を提示しています。
所得税
所得区分の明確化 実態に応じて雑所得以外の区分もあり得ることを明示。
申告分離課税(20%)+損失繰越3年 現状の総合課税(累進)からの転換を要望。
デリバティブ取引も同様の扱いへ 分離課税・損失繰越の対象に。
寄付の税務 一律適用の見直し(所得税法40条・措置法令87条等)。所得税法59条や措置法40条の適用検討を含め、暗号資産による寄付を阻害しない枠組みを求める。
資産税(相続・贈与)
取得費加算の特例の対象化 相続により取得した暗号資産を譲渡した場合、取得費加算を認める。
相続財産評価の選択肢 相続開始前3か月平均時価のうち最も低い額を選べる制度を要望。
総論
暗号資産と暗号資産の交換は非課税とし、円転時にまとめて課税する方式への転換を提案。
ボラティリティが高い資産の実態や、連続する交換取引の煩雑さを踏まえ、課税の簡素化・中立性を志向。納税資金の確保や記録負担の軽減に資する可能性があります。
2. 相続で露呈する「暗号資産100億円問題」
巨額の暗号資産を相続したケースの歪みです。
現行では、相続により取得した暗号資産について取得費加算の特例が適用されず、相続時点の価格で評価。
富裕層の相続では相続税率が最高55%となり、納税のために暗号資産を売却すると、売却益に所得税(最高55%)まで発生し得る。
結果として、資産価値を超える負担になりかねない。
取得費加算の特例適用や有利な評価選択が認められれば、納税原資の確保や過度なダブル課税リスクの緩和に繋がります。暗号資産のみで巨額を保有する事例は十分想定され、生前対策・遺産分割設計・納税資金手当がこれまで以上に重要です。
3. 暗号資産による寄付 メリット・デメリットとポイント付与の課税
暗号資産による寄付が注目される理由
24時間・国境を越えた即時性、低コスト、受け手に銀行口座不要という利点。
ウクライナ紛争時には世界から95億円超が直接ウォレットに集まり、UNHCR等の人道支援でのステーブルコイン寄付、米国大統領選候補の暗号資産による選挙資金など、活用が拡大。
日本でも能登半島地震で迅速な募金が行われた実績。
一方での課題
寄付者側は口座開設→円→暗号資産交換の手間、受け手側は現金化の実務が必要。
送金ミスの不可逆性など暗号資産固有のリスクも残る。
寄付金控除の取り扱いは十分整備されておらず、確定申告時は要注意。
ポイントで付与されるビットコインの扱い
カード利用等でポイントとしてBTC付与される仕組みが拡大。
原則、取得時点の申告は不要とされる一方、その後の値上がり分を含めて利用時に所得が生じ得る。
価格高騰局面では、一時所得の特別控除を超過し、申告が必要となるケースも想定。
付与時点・利用時点・評価額の記録を残し、利用形態(換金・商品交換)ごとに所得区分・課税可否を確認。一般利用でも思わぬ申告対象になり得ます。
4. 市場・制度の近況 Mt.Gox配当、企業保有、ETF、DAO、ステーブルコイン
価格と長期保有の帰結 Mt.Gox再生配当
- 2014年の事件後、長期ロックされていた口座が2024年7月から一部弁済(BTC)を開始。
- 低取得単価(例 5,000円/BTC)の保有者が、現在価格で多額の配当を受け始めている状況。12万7千人規模の債権者が対象で、需給・課税の両面で影響が出る可能性。
国内利用の広がりと企業保有
日本の暗号資産口座は約1,000万口座(2024年8月時点)。
上場企業31社が保有との報道もあり、メタプラネットのように大口保有の公表で株価が大きく動く例が出現。
実務的含意 企業会計・税務(評価・期末処理・開示)の整備、社内規程/内部統制、ボラティリティ対応が中小企業にも波及する見込み。
ETF・DAO・ステーブルコイン
海外では現物BTC ETFの資産規模が世界最大級に拡大。日本での導入可否・課税方式(源泉あり分離課税など)の議論が今後の税制に影響し得る。
DAOは国内会社法が未整備で法人格の取扱いが課題。
改正資金決済法(令和5年6月施行)後、円連動ステーブルコインの発行・実証が進展。JPYC×地方銀行の取組や、国際決済の実証など用途が拡大。
5. 今すぐ整えるチェックリスト
記録の完全性 取引履歴(取引所・ウォレット)、付与ポイントの取得・利用履歴、寄付の送付先アドレス・受領エビデンス。
相続・贈与の生前対策 評価・分割・納税資金の設計、コールドウォレット管理、秘密鍵・復元フレーズの承継体制。
企業対応 保有方針(投資目的/決済用/テスト用)、会計方針、内部統制、承認プロセス、期末評価と税務申告フロー。
寄付の取り扱い 寄付金控除の要件確認、領収証明の取得方式、換金プロセスの整備。
ステーブルコイン/電決済手段 法令上の区分、会計・税務(評価・期末処理)、入出金の実務手順。
税務調査に備えた整備 時系列整理、ウォレット間移動のトレース、第三者照合可能な資料化。
まとめ
制度と現場のギャップを埋めるのは「事前設計」と「記録」です。暗号資産の利用は、個人投資・寄付・企業保有・国際決済まで広がりました。一方で、税制・会計・法制度にはなお未整備や運用上の難所が残ります。相続の取得費加算・評価方法、寄付の税務、ポイント付与の所得認識、ETF・DAO・ステーブルコインの制度接続——いずれも現場では今この瞬間に判断が求められる論点です。
だからこそ、取引設計と証拠保存を先に決める、これが最大の防御になります。
執筆者 税理士 大見 光男(おおみ みつお)
税理士登録番号 156268
東京税理士会所属
大見税理士事務所 東京都目黒区・世田谷区・自由が丘 相続・暗号資産・法人税務に強い税理士
略歴
1982年 東京都大田区・六郷土手にて生まれる
2004年 日本大学卒業
2013年 大田区の会計事務所にて、中小法人・医業・不動産所得の申告・節税対策を担当
2017年 税理士登録。大見光男税理士事務所を開業
2018年 著書『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』(税務経理協会)を出版
2022年 病気療養のため一時休業
2025年 税理士に再登録し、「大見税理士事務所」を再スタート
保有資格
税理士(税理士登録番号 156268)
セミナー・講演実績
サンワード貿易株式会社 仮想通貨税金セミナー(2019年10月)
仮想通貨節税セミナー「法人化のメリット・デメリット」(2018年10月)
サンワード貿易株式会社「知っていると知らないとじゃ大違い!!」仮想通貨税金セミナー(2018年10月)
一般社団法人日本マイニング協会主催「暗号通貨投資と節税セミナー」(2018年8月・9月・10月)
税理士による仮想通貨の確定申告セミナー(2018年1月)
メディア取材
株式会社KADOKAWA「ASCII.jp」取材(2018年2月)
税理士ドットコム 取材(2018年10月)
書籍・寄稿
『税経通信』1月号 特集(税務経理協会)「仮想通貨の基礎知識と所得計算実務」(2018年12月)
『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』(ぱる出版)」(2018年10月)

