相続税についてわかりやすく解説|コラム

2025.09.16

相続

相続税についてわかりやすく解説

大見税理士事務所|東京都目黒区・世田谷区・自由が丘/相続・暗号資産・法人税務に強い税理士

※本記事は制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。個別事情により取扱いが異なりますので、詳細は個別にご相談ください。2025年9月現在の法令に基づいています。

相続税が課税される理由

相続税は「なぜ存在するのか」という点を理解すると、その仕組みも分かりやすくなります。 相続によって財産が無償で移転すると、所得税などを経由せずに資産が一部の人へ集中してしまいます。これをそのまま放置すると社会全体の公平性が損なわれるため、国は相続税を課しています。

相続税の背景には、次のような考え方があります。

所得税の精算説 生前に課税できなかった部分を、相続時に精算するという考え方。

富の再分配説 財産が特定の家系に集中するのを避け、社会全体のバランスを保つ考え方。

不労所得説 たまたま資産家の家に生まれた偶然性に課税するという考え方。

つまり、相続税は単に税金を取る制度ではなく、「社会の公平を維持するための仕組み」であると言えるでしょう。

相続の開始とは?

「いつから相続が始まるのか?」という点は非常に重要です。 基本的には 被相続人(亡くなった方)が死亡した時 に相続が開始します。

ただし法律上は、

自分が相続人であることを知ったとき

遺言で財産を受け取ることを知ったとき

を基準とする考え方もあります。

しかし実務的には、まずは 「相続開始=死亡の時」 と理解すれば問題ありません。

相続放棄について

相続では「現金・土地・株式などのプラスの財産」だけでなく、「借金などのマイナスの財産」も承継します。

そのため、相続財産がプラスよりマイナスの方が大きい場合は、相続人にとって大きな負担となります。 このようなときに利用できるのが 相続放棄 です。

相続放棄の特徴は以下の通りです。

相続人は「私は相続人になりません」と家庭裁判所に申し出ることができる

手続きは 相続の開始を知った日から3か月以内 に行わなければならない(民法915条)

相続放棄をしなかった場合、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぐことになる

つまり、相続は「必ず相続人になる必要はない」という制度設計になっています。 借金などのリスクがある場合は、早めにご相談していただき放棄の手続きを検討することが大切です。

遺言と遺留分

相続においてもう一つ重要な要素が遺言です。 遺言とは、自分の死亡後に財産をどう分けるかを示す最終的な意思表示です。

しかし、遺言の内容がすべて自由に決められるわけではありません。 相続人には「最低限もらえる権利(遺留分)」が法律で保証されています。

遺留分の基本ルール

配偶者や子が相続人の場合 → 遺産の1/2が遺留分

父母だけが相続人の場合 → 遺産の1/3が遺留分

兄弟姉妹には遺留分はない

例えば、「全財産を第三者に遺贈する」と遺言に書いてあっても、子や配偶者は遺留分侵害額請求を行うことで一定割合を取り戻せます。 つまり、本人の意思と相続人の権利のバランスを取る仕組み が遺留分なのです。

遺贈と贈与、そして死因贈与

遺言による財産の譲渡を「遺贈」と呼びます。遺贈には次の二種類があります。

  • 包括遺贈 割合で指定する(例 「遺産の5分の1を与える」)
  • 特定遺贈 特定の財産を指定する(例 「自宅の土地を与える」)

包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、相続人と同じようにプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐ必要があります。 一方で特定遺贈の場合は、指定された財産をそのまま受け取るだけで済みます。

また、「死因贈与」という制度もあります。これは「私が死んだらこの財産をあげます」と生前に約束しておく契約です。名前は贈与でも、財産を受け取るのは死亡時なので、相続税の対象になります。

相続税の納税義務者とは

相続税は「財産をもらった人=個人」に課税されるのが大原則です。 ただし、その人がどの範囲の財産について課税対象になるか は、日本との関係の深さによって異なります。

無制限納税義務者と制限納税義務者

無制限納税義務者

  • 定義 日本に住所(または1年以上の居所)がある個人
  • 課税範囲 世界中の財産が課税対象(全世界所得課税)
  • 出典 所得税法2条1項5号

制限納税義務者

  • 定義 日本に住所がなく、居所も1年未満の個人
  • 課税範囲 日本国内の財産のみが課税対象
  • 出典 所得税法2条1項6号

例えば、日本人が日本国内と海外の不動産を相続した場合は、無制限納税義務者としてすべてが課税対象となります。 一方で外国人が相続人の場合、日本国内の財産にだけ課税されます。

つまり、日本との結びつきの強さ=課税範囲の広さ という仕組みになっているのです。

個人とみなされる法人等

相続税は原則として「人=個人」に課税されますが、例外的に「個人とみなされる団体」も対象となります。

人格のない社団等(例 PTA、町内会など)

持分の定めのない法人(例 学校法人、宗教法人)

ただし国や地方公共団体は相続税の納税義務者にはなりません。営利法人は法人税の課税対象となるため、相続税はかかりません。

相続税が課税される財産

課税対象となる財産は大きく2種類に分かれます。

1. 本来の相続財産

現金

預貯金

不動産(土地・建物)

株式・投資信託

動産や事業用資産

これらは被相続人が直接所有していた財産で、相続開始時点の評価額に基づいて課税されます。

2. みなし相続財産

一見すると相続財産ではありませんが、「死亡を契機に受け取る財産」として相続税の対象になるものです。代表例は以下のとおりです。

生命保険金

退職手当金

たとえば、被相続人が掛け続けていた生命保険の保険金を遺族が受け取る場合、形式的には「保険会社から受け取るお金」ですが、実質的には被相続人が払った保険料に基づいて得られた財産です。 そのため、相続税の対象とされます。

生命保険金と課税関係

生命保険金は誰が保険料を負担していたかによって課税区分が変わります。

例 保険金1,000万円、保険料の負担者が以下のケース

  • 被相続人 500万円分 → 相続税
  • 配偶者 300万円分 → 贈与税
  • 受取人本人 200万円分 → 所得税

このように「誰がいくら保険料を負担していたか」が課税の判断基準となります。

生命保険金の非課税制度

相続税では、遺族の生活保障を目的として 生命保険金の非課税制度 が設けられています。

  • 非課税限度額 法定相続人の数 × 500万円
  • 対象者 相続人のみ(遺族一般ではなく、法定相続人に限定)
  • 計算上の注意点 相続放棄があっても、非課税額の計算では「放棄がなかったもの」として人数をカウント(相続税法施行令3条)

例えば、配偶者と子2人の場合、非課税限度額は 500万円 × 3人 = 1,500万円 となります。 この枠内であれば相続税は課されません。

相続税の申告期限と実務上の流れ

相続税には明確な申告期限があります。

相続放棄の期限 相続開始を知った日から3か月以内(民法915条)

相続税の申告期限 相続開始から10か月以内(相続税法27条)

期限を過ぎてしまうと、放棄できなかったり、申告漏れで加算税や延滞税が発生する恐れがあります。

ご相続が起こった際の簡単な流れは以下の通りです。

  1. 財産と債務の調査
  2. 相続放棄や限定承認の検討(3か月以内)
  3. 財産評価・遺産分割協議
  4. 相続税申告書の作成と提出(10か月以内)
  5. 相続税の納付

まとめ

相続税は「財産を受け取る個人」に課税される制度であり、その背景には「社会の公平性を維持する」という目的があります。

相続の開始は被相続人の死亡時

財産にはプラスとマイナスがあり、不要なら相続放棄が可能

遺言で自由に財産を分けられるが、遺留分で相続人の最低限の権利が守られている

贈与や死因贈与も相続税の課税対象になり得る

無制限納税義務者・制限納税義務者の区別により、課税範囲が変わる

生命保険金や退職金は「みなし相続財産」として課税対象

生命保険には相続人を守るための非課税制度がある

申告期限は10か月、放棄の期限は3か月

大見税理士事務所では、相続税の申告や相続放棄の判断、生命保険の活用方法まで、実務に基づいたアドバイスを行っています。 「相続税は複雑でよくわからない」と感じる方も、まずはお気軽にご相談ください。

今回の記事の主要用語と出典まとめ

相続税

意義 人が亡くなったときに、その人の財産を無償で承継した相続人に対して課税される税金。
出典 相続税法1条

相続の開始

意義 被相続人(亡くなった人)が死亡した時点で開始し、相続人に権利義務が承継される。
出典 民法882条

相続放棄

意義 プラスの財産だけでなく借金などのマイナス財産も引き継ぐため、相続人が「相続しません」と家庭裁判所に申し出て、最初から相続人でなかったことにする制度。
期限 相続の開始を知った時から3か月以内。
出典 民法915条

限定承認

意義 相続によって得た財産の範囲内で被相続人の債務を弁済することを条件に相続を承認する方法。マイナス財産が不安な場合に利用できる。
出典 民法922条

遺言

意義 被相続人が自分の死後、財産をどう分けるかを示す最終的な意思表示。
出典 民法960条

遺贈

意義 遺言によって相続人以外の人に財産を与える行為。包括遺贈と特定遺贈がある。
出典 民法964条

遺留分

意義 相続人が最低限取得できる法定の取り分。遺言で全財産を他人に与えても、遺留分を侵害された相続人は請求できる。
出典 民法1028条

贈与

意義 生前に財産を無償で他人に与える契約。通常は贈与税の対象。
出典 民法549条

死因贈与

意義 贈与者が死亡したときに効力を生じる贈与契約。実際に取得するのは死亡時なので相続税の対象。
出典 民法554条

無制限納税義務者

意義 日本に住所(または1年以上の居所)がある個人で、全世界の財産が相続税の対象となる人。
出典 所得税法2条1項5号・相続税法1条の3

制限納税義務者

意義 日本に住所がなく、居所も1年未満の個人。日本国内にある財産のみ課税対象となる。
出典 所得税法2条1項6号・相続税法1条の3

みなし相続財産

意義 本来の相続財産ではないが、死亡に伴い取得するため相続税の対象とされる財産。代表例は生命保険金や退職手当金。
出典 相続税法3条1項

生命保険金の非課税制度

意義 相続人の生活保障の観点から、生命保険金には「法定相続人の数×500万円」までの非課税枠がある。
出典 相続税法12条

相続税の申告期限

意義 相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付が必要。
出典 相続税法27条

記事作成者 税理士 大見 光男

略歴

1982年 東京都大田区・六郷土手にて生まれる
2004年 日本大学卒業
2013年 大田区の会計事務所にて、中小法人・医業・不動産所得の申告・節税対策を担当
2017年 税理士登録。大見光男税理士事務所を開業
2018年 著書『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』出版
2022年 病気療養のため一時休業
2025年 税理士に再登録し、「大見税理士事務所」を再スタート

保有資格

税理士(税理士登録番号 156268)

セミナー

サンワード貿易株式会社 仮想通貨税金セミナー(2019年10月)

仮想通貨節税セミナー「法人化のメリット・デメリット」(2018年10月)

サンワード貿易株式会社「知っていると知らないとじゃ大違い!!」仮想通貨税金セミナー(2018年10月)

一般社団法人日本マイニング協会主催 節税が投資につながる?!プロに聞く!暗号通貨投資と節税セミナー(2018年8月・9月・10月)税理士による仮想通貨の確定申告セミナー(2018年1月)

取材

株式会社KADOKAWA「ASCII.jp」取材(2018年2月)

税理士ドットコム 取材(2018年10月)

書籍・寄稿

『税経通信』1月号 特集(税務経理協会)「仮想通貨の基礎知識と所得計算実務」(2018年12月)

『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』(ぱる出版)」(2018年10月)

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