【相続税の正しい理解】退職手当金・弔慰金・非課税財産・債務控除を法律に基づき整理|コラム

2025.09.21

相続

相続税の正しい理解 退職手当金・弔慰金・非課税財産・債務控除を法律に基づき整理

執筆者 税理士 大見光男(大見税理士事務所 自由が丘) 相続・暗号資産・法人税務に対応

本記事は初心者の方向けに、細かい例外や特殊計算を省略し、現在施行の法令・通達に基づく全体像の理解を目的に整理しています。個別の適用は事案により異なるため、詳細は専門家へご相談ください。

目次

  1. はじめに
  2. 相続税における退職手当金等の取扱い
  3. 弔慰金の取扱い
  4. 相続税の非課税財産について
  5. 国等に相続財産を贈与した場合
  6. 債務控除と葬式費用
  7. 保証債務・連帯債務の扱い
  8. 葬式費用の取扱い
  9. まとめ
  10. 用語の意義一覧(まとめ)
  11. 執筆者プロフィール

はじめに

相続税は、専門的な用語や法律が多く、初めて調べる方にとっては非常に難しく感じられる分野です。こちらでは 大見税理士事務所 から、初心者の方でも理解できるように、できるだけ簡略化して説明しています。細かい例外や特殊な計算は省略し、現在施行されている民法・相続税法などの法律を根拠に整理しています。そのため、まず「全体像をつかむ」「相続税の基礎知識を押さえる」ことを目的とし、正確性を担保しつつも、専門家向けではなくわかりやすく一般の方向けに記載しています。

相続税における退職手当金等の取扱い

退職手当金等とは

退職手当金等は、被相続人が生前に勤務先に労務を提供していたことに対する対価です。本人が存命であれば自ら受け取るものですが、死亡退職の場合には遺族が受け取ります。形式的には会社から遺族に直接支払われますが、実質的には被相続人が遺族に財産を残したと評価されます。そのため、相続税法上「みなし相続財産」とされ、相続税の課税対象とされています(相続税法3条1項5号)。

非課税枠の存在

退職手当金等には非課税限度額が設けられています。その金額は 「500万円 × 法定相続人の数」 であり、生命保険金の非課税制度と同じ方式です(相続税法12条1項)。例えば法定相続人が3人の場合、1,500万円までは非課税となり、超過部分にのみ相続税が課されます。

みなし取得財産を考える際の3つの視点

  1. 課税財産・課税対象者
    生命保険金 → 受取人が対象/退職手当金 → 取得者(遺族)が対象
  2. 課税額の評価方法
    一時金か年金形式かで評価額が異なる場合があります(相続税法22条)。
  3. 税目の分類
    生命保険金 → 保険料の負担割合によって、相続税・贈与税・所得税に分かれることがある/退職手当金 → 全額が相続税課税対象(労務対価の性質から)

弔慰金の取扱い

弔慰金とは

弔慰金とは、被相続人の死を悼み、遺族を慰める目的で勤務先から支払われる金銭です。名称は「死亡弔慰金」「死亡見舞金」「香典」など様々ですが、これらを総称して弔慰金と呼びます。性格上、弔慰金は課税対象外とされるのが原則です。これは法律に明記されているわけではなく、相続税基本通達3-20において「相当な範囲内の弔慰金は課税しない」と整理されています。

課税対象となる場合

もっとも、名目が「弔慰金」であっても、実質的に退職手当金と評価できる場合には相続税の課税対象となります。これを防ぐために、次の二つの基準が設けられています。

  1. 実質基準
    退職功労金と同額を「弔慰金」と名称だけ変えて支給するような場合、全額を退職手当金として課税します。
  2. 形式基準(過大支給部分の課税)
    規程等に実質的な裏付けがない場合でも、金額が過大であれば超過部分が退職手当金に含まれます。
    ・業務上死亡 → 給与の3年分まで非課税
    ・業務外死亡 → 給与の半年分まで非課税
    (相続税基本通達3-20(2))


月給50万円の人が業務外で死亡した場合、半年分の300万円までが非課税。弔慰金が500万円支払われた場合、差額200万円は退職手当金に含められ相続税課税対象となります。

相続税の非課税財産について

非課税財産の考え方

相続税の課税範囲は、納税義務者の区分によって異なります。
・無制限納税義務者(国内に住所があるなどの場合)は、全世界の財産が対象(相続税法1条の3)。
・制限納税義務者(国外に居住する場合)は、日本国内の財産のみが対象(相続税法1条の4)。

その上で、課税対象財産を洗い出し、評価額を合計し、税率を適用するのが相続税の基本計算の流れです。ただし、ここで重要となるのが「非課税財産」です。非課税財産とは、一旦は課税対象に含めるものの、その性格や政策的配慮から「課税を好ましくない」と判断され、非課税とされる財産をいいます(相続税法12条)。

非課税と課税対象外の違い

両者とも最終的には税金がかからない点で同じですが、法的な位置づけが異なります。
・国外財産(制限納税義務者の場合) → そもそも課税対象外
・非課税財産 → 課税対象に一度含めたうえで、非課税扱い

この区別を理解することは、重要です。

非課税財産の具体例

相続税法12条で限定列挙されており、それ以外は非課税とされません。代表例は以下の通りです。

  1. 皇位継承に伴う皇室財産(皇室経済法)
  2. 墓地・霊廟・祭具・仏壇など(相続税法12条1項2号)
  3. 公益目的に使用される財産(相続税法12条1項3号)※「2年縛り」あり

国等に相続財産を贈与した場合

直接遺贈の場合

被相続人が財産を国や地方公共団体に直接遺贈した場合、相続税は課されません(相続税法5条)。

相続人を経由する場合

いったん相続人が財産を取得した後、国や地方公共団体に贈与した場合、原則は相続税が課されます。しかし、租税特別措置法70条により、一定の要件を満たせば非課税とされます。

措置法70条非課税の要件

  1. 対象財産 相続や遺贈で取得した財産をそのまま贈与すること(売却代金の贈与は対象外)。
  2. 期限 相続税申告期限(10か月以内)までに贈与を行うこと。
  3. 贈与先 国・地方公共団体・公益法人(公益社団法人、公益財団法人、認定NPO法人等)。宗教法人は対象外。
  4. 利用状況確認(2年縛り) 贈与後2年間の公益目的使用が要件。

公益信託の場合

特定公益信託に財産を拠出する場合も同様に非課税扱いとなります(租税特別措置法70条の2)。

債務控除と葬式費用

債務控除の基本的な考え方

相続税は「正味財産」に課税されます(相続税法13条)。正味財産とは、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた金額を指します。

控除できる債務

銀行借入金(相続税法基本通達13-1)

土地購入代金の未払金

所得税・固定資産税などの租税債務

また、例外的に「葬式費用」も控除対象となります(相続税法13条2号)。

控除できない債務

時効消滅した債務(民法166条)

非課税財産に対応する債務(例 墓地購入代金)

相続人の責めによる延滞税(相続税基本通達13-5)

控除対象者

債務控除は相続人および包括受遺者に認められます(相続税法13条)。葬式費用に限っては、相続放棄者等であっても実際に負担した場合は控除が認められます(相続税基本通達13-4但書)。

保証債務・連帯債務の扱い

保証債務

保証債務は不確実性があるため、原則控除できません(相続税基本通達13-2)。ただし、保証人が代位弁済し、求償不能が確定した場合は例外的に控除が認められます。

連帯債務

連帯債務は持分相当額のみ控除されます(相続税基本通達13-3)。

葬式費用の取扱い

控除できるもの

葬儀本体の費用

遺体搬送費用火葬費・埋葬費

お布施など葬式に直接関連する費用

控除できないもの

香典返礼費用(相続税基本通達13-4(1))

墓地購入費用(相続税法12条1項2号)

初七日・四十九日などの法要費用(相続税基本通達13-4(3))

事件性がある場合の解剖費用(相続税基本通達13-4(5))

まとめ

退職手当金や弔慰金は「みなし相続財産」として扱われ、非課税枠や弔慰金の限度が制度化されている。

相続税の非課税財産は相続税法12条に限定列挙される。

国や地方公共団体への贈与は相続税法5条・租税特別措置法70条により非課税となる場合がある。

相続税は正味財産課税の原則に従い、債務控除や一定の葬式費用の控除が認められる。

相続税の初回相談(60分) 自由が丘の大見税理士事務所が丁寧にサポートします。遺産分割や申告の進め方、必要書類の整理までお気軽にご相談ください。

用語の意義一覧(まとめ)

退職手当金等 被相続人の労務対価として支払われる金銭(相続税法3条1項5号)。

弔慰金 遺族を慰める目的の金銭。相当額は非課税(相続税基本通達3-20)。

みなし相続財産 形式は相続でないが実質承継とみなす財産(相続税法3条)。

非課税財産 政策・性質上課税しない財産(相続税法12条)。

制限納税義務者 国内財産のみ課税(相続税法1条の4)。

無制限納税義務者 全世界の財産が課税対象(相続税法1条の3)。

措置法70条非課税 相続財産を期限内に国等へ贈与で非課税(租税特別措置法70条)。

特定公益信託 公益目的の信託。拠出は非課税扱い(租税特別措置法70条の2)。

債務控除 現存し支払確実な債務を控除(相続税法13条)。

正味財産 プラス財産からマイナス財産を差し引いた残額(相続税法13条)。

葬式費用 葬儀に直接必要な費用(相続税法13条2号、基本通達13-4)。

保証債務 原則控除不可(基本通達13-2)。

連帯債務 持分相当額のみ控除(基本通達13-3)。

執筆者 税理士 大見 光男

略歴
1982年 東京都大田区・六郷土手にて生まれる
2004年 日本大学卒業
2013年 大田区の会計事務所にて、中小法人・医業・不動産所得の申告・節税対策を担当
2017年 税理士登録。大見光男税理士事務所を開業
2018年 著書『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』出版
2022年 病気療養のため一時休業
2025年 税理士に再登録し、「大見税理士事務所」を再スタート

保有資格 税理士(税理士登録番号 156268)

セミナー

サンワード貿易株式会社 仮想通貨税金セミナー(2019年10月)

仮想通貨節税セミナー「法人化のメリット・デメリット」(2018年10月)

サンワード貿易株式会社「知っていると知らないとじゃ大違い!!」仮想通貨税金セミナー(2018年10月)

一般社団法人日本マイニング協会主催 節税が投資につながる?!プロに聞く!暗号通貨投資と節税セミナー(2018年8月・9月・10月)

税理士による仮想通貨の確定申告セミナー(2018年1月)

取材

株式会社KADOKAWA「ASCII.jp」取材(2018年2月)

税理士ドットコム 取材(2018年10月)

書籍・寄稿

『税経通信』1月号 特集(税務経理協会)「仮想通貨の基礎知識と所得計算実務」(2018年12月)

『だいたい3分でわかる仮想通貨の税金の話』(ぱる出版)」(2018年10月)

※本記事は制度の概要を一般向けにわかりやすく整理したものです。細部の要件や例外については割愛しております。

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